実際の評価モデル例(高層階 vs 低層階)
ここでは、タワーマンションにおける高層階と低層階の「市場価格」と「課税評価額」の乖離を具体的に比較できるよう、簡易モデルを示します。
🏢 前提条件(モデル設定)
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項目 |
内容 |
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物件 |
40階建タワーマンション(東京都心) |
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専有面積 |
各戸70㎡(全戸同一) |
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土地持分 |
各戸1/200 |
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建築年 |
築5年 |
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用途地域 |
商業地域(容積率600%) |
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税評価基準 |
改正前:階差なし、改正後:階層補正導入 |
💴 ① 市場価格(実勢)
階が上がるにつれて眺望・日照・ステータスなどで価格が上昇する想定です。
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階層 |
市場価格(㎡単価) |
住戸価格(70㎡) |
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5階 |
120万円/㎡ |
約8,400万円 |
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20階 |
150万円/㎡ |
約1億500万円 |
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35階 |
180万円/㎡ |
約1億2,600万円 |
→ 高層階ほど+50%以上の価格差が生じています。
🧾 ② 改正前の課税評価(固定資産税・相続税)
従来は階層差を反映せず、
建物評価額は「建築費÷総延床面積」で均等配分していました。
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階層 |
固定資産税評価額(建物+土地) |
実勢価格比 |
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5階 |
約5,000万円 |
約60% |
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20階 |
約5,000万円 |
約48% |
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35階 |
約5,000万円 |
約40% |
→ 実勢価格が高い上層階ほど「課税評価の割合」が低くなり、高層階ほど実質的に減税効果が大きいことが分かります。
(例:35階は実勢の約40%しか評価されない)
🆕 ③ 改正後(2024年度以降)の評価モデル
総務省の指針に基づき、階層・眺望などによる補正率を設定。
ここでは仮に以下のような補正率を用います。
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階層 |
階層補正率(仮定) |
補正後課税評価額 |
実勢価格比 |
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5階 |
-10% |
約4,500万円 |
約54% |
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20階 |
±0% |
約5,000万円 |
約48% |
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35階 |
+20% |
約6,000万円 |
約48% |
→ 高層階の税評価が上昇し、低層階はやや減額。
ただし、市場価格の上昇ほどは追いつかないため、依然として一定の乖離が残ります。
📊 ④ グラフで見る乖離イメージ(概念図)
市場価格(万円)
│ ● 35階 1億2,600万
│ ● 20階 1億500万
│ ● 5階 8,400万
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│ ──────────────── 固定資産税評価額線(約5,000万前後)
│
└──────────────────────────▶ 階層
5F 20F 35F
→ 実勢価格の差に比べて、税評価額の傾きが緩やか。
この傾きの差が「タワマン節税」の実態を表しています。
🧮 ⑤ 相続税の節税効果(例)
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階層 |
実勢価格 |
改正前評価額 |
評価割合 |
評価差額 |
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35階 |
1億2,600万円 |
5,000万円 |
約40% |
約7,600万円 |
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5階 |
8,400万円 |
5,000万円 |
約60% |
約3,400万円 |
→ 相続財産評価で見ると、同面積なのに約4,000万円の評価差が出ることも。
この差が「タワマン節税」として相続税対策に利用されていました。